エアコンの再熱除湿って何?弱冷房除湿と何が違うの?除湿機能の仕組みを現役のエアコン設計者が分かりやすく解説!!

エアコンの除湿方式には再熱除湿式と弱冷房方式の2種類があります。再熱除湿と弱冷房除湿では何が違うのか。エアコンの仕組みから、それぞれの除湿方法のメリットについて現役のエアコン設計者が分かりやすく解説します!

目次

この記事を読むと

除湿運転の違いが分かるようになり、エアコンを選ぶときの参考になります。

また、『冷凍理論』『冷凍サイクル』『熱力学』『熱流体』など難しい言葉は一切出さずに、エアコンの仕組みや、除湿の仕組みが分かるようになります。

エアコンの仕組みに興味がある方、難しいことを勉強しようとしている方にも、導入としておすすめです。

そもそもエアコンてどういうしくみなの?

エアコンは、空気を冷やしたり暖めたり、除湿したりと色々な機能をもっていますが、いったいどのような技術が使われているのでしょうか?

エアコンの不思議なところは、

『外が暑い日にお部屋の空気を冷やす』ことができて、

『外が寒い日にお部屋の空気を暖める』こともできる

という点ですよね。

その秘密は、『ヒートポンプ』という技術にあります。

ヒートポンプとは?

『ヒートポンプ』とはいったいどのような技術なのでしょうか?

私たちがポンプといって思い浮かぶのは、水を汲みあげる機械ですね。

ヒートポンプは、その名前のイメージの通り、『熱(ヒート)を汲みあげる機械(ポンプ)』という意味です。

水のポンプは、位置が低い所から高い所へと水を汲みあげる装置。

ヒートポンプは、温度が低い所から高い所へと熱を汲みあげる装置

ヒートポンプを構成する要素は、こちらの4つです。

  • 圧縮機
  • 熱交換器(凝縮器)
  • 膨張弁
  • 熱交換器(蒸発器)
アカペン
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名前を聞いただけで頭が痛くなりそうですが、まずは気にせずに。

この4つの要素は、配管でつながれていて、その中には、『冷媒』という、熱を運ぶためのガスが入っています。

アカペン
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エアコンの冷媒には、R32というガスが使われています。

ヒートポンプという技術は、この冷媒の状態を制御して、熱を汲みあげる仕組みを作っているのです。

ではまず、熱を汲みあげるためにはどうすればよいでしょうか?

熱は、高い所から低い所に移動する性質がありますね。

そのため、温度が低い場所で熱をもらうためには、冷媒はそれよりも温度が低くなければいけません。

さて、ここで、温度が低い場所を10℃とします。

そして、冷媒の状態は、温度が5℃で、圧力が低い、液体だとしましょう。

アカペン
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冷媒がなぜこの状態なのかは、後で説明がつながります。

この状態の冷媒は、熱をもらうと、すぐに蒸発してしまうような状態です。

冷媒は、一つ目の熱交換器に入っていきます。

すると、熱は、10℃の空気から配管内を流れる5℃の冷媒へと移動、

そして、冷媒は空気から熱をもらい、蒸発します。

これが行われる熱交換器を、『蒸発器』といいます。

『蒸発器』は、冷媒が外から熱を奪って蒸発(液体→気体)する場所

次に、もらった熱を、温度が高い場所に移動させたいので、冷媒の温度をもっと高くしたいと思います。

例えば、温度が高い場所を30℃とします。

今の冷媒の状態は、先ほど、蒸発器を過ぎて、温度が5℃で、圧力が低い、気体です。

ここで、気体は圧力が上がると温度が上がるという性質があります。

熱は、分子の運動の激しさだと思ってイメージしてもらうと分かりやすいです。

今まで広い空間で動いていた分子たちは、圧縮されて動きが激しくなり、温度が高くなります。

その性質を利用して、気体を圧縮させて温度をあげたいと考えます。

これを実現させる場所を『圧縮機』といいます。

圧縮機は、冷媒を圧縮する役割もありますが、配管内の冷媒を送り出し、循環させる役割をもっています。

『圧縮機』は、冷媒を圧縮して圧力と温度を上げる場所

さて、圧縮機を通過した冷媒は、温度が50℃で、圧力の高い、気体です。

冷媒は二つ目の熱交換器に入っていきます。

これで、温度が高い場所よりも冷媒の温度の方が高くなったので、熱を放出することができるようになりました。

冷媒は、周囲の空気に熱を放出すると、圧力はそのままで、気体は液体に変わります。

アカペン
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気体が液体になることを凝縮といいます。

この凝縮が起こる熱交換器のことを『凝縮器』と呼んでいます。

凝縮すると同時に、凝縮器で液体になった冷媒は、凝縮器を出るまで熱を放出しつづけるので、温度が少し下がります。

『凝縮器』は、冷媒が放熱して凝縮(気体→液体)する場所

凝縮器を通過して、冷媒は、温度が40℃で、圧力の高い、液体になりました。

ここまでで、低い温度の場所から、高い温度の場所へ熱を運ぶイメージがだいぶつかめてきたのではないでしょうか。

さて、忘れてはいけないのが、説明をはじめたときの冷媒の状態。

はじめの冷媒の状態は、温度が5℃で、圧力が低い、液体でしたね。

今は、温度が30℃で、圧力が高い、液体です。

そのため、温度が低い場所で熱をもらうためには、冷媒はそれよりも温度が低くなければいけません。

この温度を下げるために、圧力を下げることで温度を下げることを考えます。

これを行う場所が、『膨張弁』です。

『膨張弁』では、今まで冷媒が流れていた配管よりもギュッと狭くなります。

冷媒はこの狭い部分を通過することによって、圧力が下がり、温度が下がるのです。

『膨張弁』は、冷媒を膨張させて圧力と温度を下げる場所

これによって、冷媒の温度と圧力が下がり、はじめの冷媒の状態に戻るというわけです。

アカペン
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やっと説明がつながりましたね!

ポイントは、電気のエネルギーで直接、温度を上げているわけではなく、

熱を運ぶための冷媒の状態をコントロールするために電気のエネルギーを使っているという点です。

冷媒の状態を上手にコントロールして、動かすことによって、

温度の低い所から、高い所に熱を運ぶことができるため、エネルギー効率が良いのです。

これが、ヒートポンプの仕組みです。

また、お気づきの方もいると思いますが、

エアコンでは、外部に熱を放出する、『凝縮器』で暖房を行い、外部の熱を奪う『蒸発器』で冷房を行っているのです。

冷房のしくみ

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さて、冷房の仕組みですが、まずは、ヒートポンプの解説で使った図をもう一度見てみましょう。

冷房運転では、室内の空気を冷やしたいので、室内機の熱交換器が『蒸発器』になれば、冷媒がお部屋の熱を奪って冷やしてくれますね。

こちらが、冷房運転の図です。

室内機の熱交換器が蒸発器となり、お部屋に冷たい風を送ります。

冷房運転では、室内機の熱交換器は『凝縮器』になる。

暖房のしくみ

次に、暖房のしくみを見ていきましょう。

お部屋の空気を暖めたいので、室内機の熱交換器を『凝縮器』にして、冷媒の熱をお部屋の空気に放熱すれば良いですね。

そのためには、冷媒を、冷房運転とは逆方向に流さなければいけません。

これを実現しているのが、『四方弁』です。

四方弁は、冷媒が流れる方向を変えることができるので、エアコンは、冷房運転も暖房運転もできるんですね。

暖房運転では、室内機の熱交換器は『蒸発器』になる。

冷房運転と暖房運転の説明をまとめると、

冷房運転のときは、圧縮機から出た高温の冷媒は、室外機で放熱して、膨張弁で低温となり、室内機で吸熱してお部屋の空気を冷やします。

暖房運転のときは、圧縮機から出た高温の冷媒は、室内機で放熱してお部屋の空気を暖め、膨張弁で低温となり、室外機で吸熱します。

冷媒の流れは…

冷房運転のときは、『圧縮機』⇒『室外機』⇒『膨張弁』⇒『室内機』

暖房運転のときは、『圧縮機』⇒『室内機』⇒『膨張弁』⇒『室外機』

除湿には2種類の方式がある

では、長くなりましたが、本題の、除湿運転について解説をしていきます。

除湿運転は、『弱冷房方式』『再熱除湿方式』という2種類の方式があります。

弱冷房方式とは

弱冷房方式は、その名前の通り冷房運転を行います。

通常の冷房と違うところは、積極的に冷やすことが目的ではないということです。

冷房運転では、お部屋の空気を冷やすため、室内機の熱交換器には、空気中の水分が結露して除湿されます。

これを聞くと、弱冷房にする必要があるのかと思いますが、冷房の目的はお部屋を冷やすことであり、除湿機能にはそれは求められていません。

また、現代のエアコンは、昔のように、動いて止めての繰り返しではなく、リモコンでの設定温度に向けて圧縮機の運転を柔軟に制御できるようになっています。

そして、室温が設定温度になると、『サーモオフ』といって、送風運転のような省エネ運転になります。

このサーモオフ中は、湿度を取り続けることができず、むしろ、室内機の熱交換器が持っている水分をお部屋に戻してしまう、『湿度もどり』という現象が起こります。

話しを戻すと、弱冷房除湿の目的は、あくまでも除湿することなので、この『湿度戻り』を避けるために、常に除湿し続ける必要があります。

そこで、弱い冷房運転することで、設定温度に到達しにくくなり、お部屋をあまり冷やさずに、湿度を取り続けることができるのです。

これが、『弱冷房方式』の仕組みです。

再熱除湿方式とは

弱冷房方式でも除湿はできますが、冷房なので、お部屋の温度は若干下がってしまいます。

暑くて湿度の高い日はそれでも良いかもしれませんが、

日本の梅雨の時期は、肌寒いのに湿度が高くて不快な日が多くあります。

お部屋を冷やさずに除湿を行いたい、という要望を叶えることができるのが、『再熱除湿』です。

では、弱冷房式と再熱除湿の違いをみていきましょう。

弱冷房式は、冷房と同じ仕組みです。

イメージとしては、『除湿する=冷房する』としていいと思います。

それに対し、除湿(冷房)しながらも、お部屋の空気を冷やさないようにするというのが再熱除湿なので、矛盾が生じています。

これをどう実現しているのかというと、

再熱除湿では、室内機の熱交換機の一部で冷房し、一部で暖房をしています

一体どういうことなのでしょうか。

次の図をご覧ください。

再熱除湿では、冷媒の温度を下げるための膨張弁を開放し、冷媒の温度を下げずに、室内機の熱交換器に冷媒が流れていきます。

そして、室内機の熱交換器の途中に除湿弁という膨張弁で冷媒の圧力を下げることによって、冷媒の温度を下げ、冷房(=除湿)を行います。

これによって、室内機の熱交換器を、冷媒の温度が高い部分(暖房部分)と冷媒の温度が低い部分(冷房部分=除湿部分)に分けることができるのです。

冷媒の流れだけでは分かりづらいと思いますので、室内機の断面図を見て頂ければと思います。

図から、再熱除湿は、暖かい風と冷たい風が混ざり合って、お部屋の温度を下げずに除湿をすることができることが分かります。

おまけで、室内の熱交換器を少し立体的にした図を載せておきます。イメージの補填になれば幸いです。

※メーカーによって、室内機の熱交換器の形状や除湿部分は異なります。

再熱除湿のメリットとデメリット

メリット

再熱除湿の最大のメリットは、お部屋を冷やさずに除湿ができることです。

膨張弁の開度調整によって、冷房気味や暖房気味といったような制御をすることも可能です。

デメリット

再熱除湿では、冷房よりも消費電力が少し多いです。

冷媒の流れだけで見ると、室外機でやっていたことを室内機側にもってきただけなので電気代は変わらなそうですが、実際は、消費電力がほんの少し多くなります。

しかし、ひと昔前は、再熱除湿の消費電力がとても多いというイメージがあったかもしれません。

実は、昔の方法は、室内機の熱交換器にヒーターを取り付けて、熱を与えていました。

しかし、現在はどのメーカーでも冷媒の制御で再熱除湿を行っているため、消費電力は少し多いだけなのです。

冷房、弱冷房除湿、再熱除湿の上手な使い分け

冷房運転、弱冷房の除湿、再熱除湿の特徴と上手な使い分けを表に示します。

冷房は最も除湿ができますが、部屋が冷えてしまうため、除湿もしたいし、部屋も冷やしたいときに適しています。

弱冷房の除湿は、最も省エネですが、除湿量も控えめなので、長時間運転し続けたいときにおススメです。

再熱除湿は、消費電力は少し多いですが、除湿量も多く、部屋の温度も下がりにくいので、部屋は冷やしたくないけど除湿はしたいという時におススメです。

大手エアコンメーカーとラインナップごとの除湿方法の違い

ここまで、2つの除湿方式についてご紹介してきました。

しかし、再熱除湿方式は、全てのエアコンに搭載されているわけではありません。

そこで、どのメーカーのどの機種に再熱除湿が搭載されているのか、大手エアコンメーカーの各ラインナップでの除湿方式を一覧にしてみました。

オレンジ色の文字が『再熱除湿』青色の文字が『弱冷房除湿』です。

各メーカーで搭載されている除湿機能は、単純な『弱冷房』や『再熱除湿』ではなく、各方式のデメリットを解消したり、より快適な除湿にするために、様々な工夫がなされています。

まとめ

いかがだったでしょうか?

本記事では、エアコンの仕組みや、2種類の除湿方式について解説してきました。

少し前までは、再熱除湿を搭載した機種は少なくなってきていたのですが、

コロナ禍で、お部屋をより快適な空間にしたいという需要が高まり、

除湿機能が再度脚光を浴びているように思えます。

日本は、湿度が高く、不快な環境になりやすいため、除湿機能はとても重要な機能ですよね。

みなさんも、除湿機能を見直して、より快適な空間づくりをしてみてはいかがでしょうか?

エアコンが本格稼働する前に取り付けておきたい!

▼エアコンへの虫侵入防止対策はこちら▼

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この記事を書いた人

あかぺんのアバター あかぺん エアコン設計者

・大手家電メーカーでエアコンの設計開発に従事
・日本国内だけでなく海外向けのエアコンも担当
・エアコンに関わる様々な経験を持つ
 (商品企画/製造/量販店での販売/エアコン設置)

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