【現役のエアコン設計者が提案】エアコン運転中にお部屋を換気する時は、電源オフ?そのまま運転?いちばん省エネになる『裏技』とは!?

新しい生活様式が推進される中、こまめな換気が日常になってきました。現代社会では、生活の中にエアコンは欠かせませんが、お部屋の換気をする際、みなさんはエアコンを停止していますか?それとも運転したままにしていますか?本記事では、最も省エネになる裏技をお教えします!

目次

結論

換気中に、エアコンを停止するのも、そのままの状態で運転し続けるのもどちらも違います!

本記事で紹介する裏技は、『±3℃の設定温度コントロール』です!

換気の目安とは?

まずは、新しい生活様式で推進される換気について少しおさらいです。

厚生労働省は、一人あたり毎時 30m3 を、「換気の悪い密閉空間」を改善するための必要換気量としています。

この必要換気量を満たすためには、換気回数を毎時2回以上(30分に一回以上、数分間程度、窓を全開する。)が必要だそうです。

また、空気の流れを作るため、複数の窓がある場合、二方向の壁の窓を開放すること。窓が一つしかない場合は、ドアを開けることを推奨しています。

その根拠は、CDCやWHOが急性呼吸機感染症(ARI)患者の隔離施設の基準の根拠としている文献において、「結核とはしかの拡散」と「換気回数が毎時2回未満の診察室」の間に関連が見られたという報告に基づいています。(引用:厚生労働省 冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について)

エアコンの消費電力

エアコンの状態と消費電力について見てみましょう。

昔のエアコン(20年以上前)は、設定温度に到達したら圧縮機をオフに、室温が上がってきたらオンにというようなオンオフ制御でした。

始動時の消費電力が大きく、下の図のように波が大きいため快適性も良くありませんでした。

一定速制御の動作

現在、日本で売られているルームエアコンは、オンオフ制御ではなく、『インバーター制御』という制御方式に変わっています。

インバーター制御とは、圧縮機の回転数を的確にコントロールすることで省エネ性や快適性を向上させる制御方式です。

また、一般的には、設定温度とお部屋の温度差が小さいほど、圧縮機回転数の変動も少ないため消費電力は小さくなります。

インバーター制御では、下の図のように、お部屋の温度が設定温度に到達したとエアコンが判断すると、圧縮機の回転数を低速にして省エネ運転を行う、『サーモオフ』という状態になります。

この状態のとき、消費電力は小さくなります。

インバーター制御の動作

今でも海外では、オンオフ制御の国も多いようです!

換気中、最も省エネとなるエアコンの運転方法とは?

先ほどの説明から、設定温度と室内の温度差が小さく、かつサーモオフ運転を保つことができれば、消費電力量は小さくなりそうですね!

では、どのようにすれば、それを実現することができるのでしょうか。

それを実現させるための裏技は、ズバリ、『±3℃の設定温度コントロール』です!

具体的にどうやるかというと、換気をするタイミングで、

  • 冷房運転の時は設定温度+3℃
  • 暖房運転の時は設定温度-3℃

変更すればいいだけの簡単な裏技です。

±3℃の設定温度コントロールの効果

では、その効果を確認するために、次の3つのパターンについて室内温度と消費電力の関係を見てみましょう。

  1. 換気をする時にエアコンを停止する。
  2. 換気中もエアコンをそのまま運転する。
  3. 換気をする際に、『±3℃の設定温度コントロール』を行う。

ここでは、例として、真夏日(外気温30℃)での冷房運転を想定します。

エアコンを設定温度25℃で冷房運転しています。

既に室温が25℃に到達し、サーモオフ運転に入っている状態です。

この状態を開始状態としてそれぞれの場合を比較していきます。

1.換気をする時にエアコンを停止する

まずは、エアコンの運転を停止する場合です。

換気中にエアコンを停止した時の動作
※図は分かりやすくするための参考イメージとします。メーカーによって制御方法は様々であり、一概に言えるものではありません。

図の青線は室温の変化を、赤線が消費電力の変化を示しています。

また、斜線部の面積は消費電力量(消費電力のトータル)を表しています。

図のように換気を開始するタイミングでエアコンの運転も停止しているため、その間、電力の消費はありません。

しかし、換気が終わり、エアコンをオンにすると、始動運転のために多くの電力を消費します。

さらに、始動運転からだと設定温度に到達するまでに時間がかかるため、トータルとして消費電力量は大きくなってしまいます。

2.換気中もエアコンをそのまま運転する

次に、エアコンを停止せずにそのまま運転した時エアコンの場合です。

換気中にエアコンを停止しない時の動作
※図は分かりやすくするための参考イメージとします。メーカーによって制御方法は様々であり、一概に言えるものではありません。

図の青線は室温の変化を、赤線が消費電力の変化を示しています。

また、斜線部の面積は消費電力量(消費電力のトータル)を表しています。

室温25℃のサーモオフ状態で、換気をすると、室温が30℃に向けて上昇するため、エアコンはサーモオフ運転から、ハイパワー運転となり、設定温度に戻そうとします。

そして、換気が終わり、室温が外気温と同じ30℃になると、ハイパワーで設定温度の25℃との5℃差を埋めようとします。

始動運転がなく、ある程度早く設定温度に到達するため、電源を停止する場合と比較してトータルの消費電力量は少なくなります。

3.換気をする際に、設定温度を3℃変更する

最後に、換気をする際に、『±3℃の設定温度コントロール』を行った場合です。

換気中にエアコンの設定温度を変えた時の動作
※図は分かりやすくするための参考イメージとします。メーカーによって制御方法は様々であり、一概に言えるものではありません。

この例の場合は冷房運転なので設定温度を25℃から28℃(+3℃)とします。

そのまま運転した時と同様に、室温25℃のサーモオフ状態から換気をすると、室温が上昇するため、エアコンはサーモオフ運転から、ハイパワー運転となり、設定温度に戻そうとします。

そして、換気が終わり、室温が外気温と同じ30℃になりますが、設定温度が28℃となっているため、外気温との差は2℃です。

そのため、設定温度が25℃(差が5℃)の場合と比較して緩やかに設定温度に近付き、設定温度が5℃差のときよりも早くサーモオフ状態となります。

また、その後25℃に戻しても、差が3℃なので、少しのパワーアップで設定温度に近付けることができます。

よって、そのまま運転するよりもトータルの消費電力量は少なくなります。

消費電力の比較

このように、3つのパターンで消費電力を比較すると、図の車線部の面積が消費電力量となるため、設定温度を3℃変更した場合の消費電力量が一番小さく、効果があることが分かりました。

まとめ

本記事では、換気中のエアコンの設定について、最も省エネとなる裏技を紹介しました。

みなさんも、エアコンをそのまま運転したほうが良いというのはどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、さらにそこにひと手間かけて設定温度を3℃変更することで、より省エネとなる運転を実現することができます。

是非、みなさんも実践してみてくださいね!

何かご質問がありましたらメッセージ欄もしくはお問い合わせフォームからどうぞ。

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この記事を書いた人

あかぺんのアバター あかぺん エアコン設計者

・大手家電メーカーでエアコンの設計開発に従事
・日本国内だけでなく海外向けのエアコンも担当
・エアコンに関わる様々な経験を持つ
 (商品企画/製造/量販店での販売/エアコン設置)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • アカペンさん、勉強させて頂きました。
    エアコン素人の自分も思っていたのですが、エアコンを一旦止めて再スタートさせると、すごく電気を使うのですね。
    これ「ちょっと外出」の時も同じ扱いをすれば良い気がします。
    例えば、
    お昼になって(猛暑時間帯ですね)1時間ほど食事に出るとき、
    25℃→28℃に設定を変更して出かけ、
    帰宅したら再び25℃に戻す。

    長時間ならともかく、この程度の時間なら充分おトクになりそうに思いますが、いかがでしょうか?

    • 節税大王様、コメントありがとうございます!
      おっしゃる通り、おでかけの際に設定温度を上げることで設定温度に早く到達するため、
      設定温度を上げる前よりも早く省エネモードに切り替えることができます。
      とても有効な方法だと思います!

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