エアコンの内部クリーン機能は、いまや搭載されていて当前の機能となっていますが、メーカーによってその機能はさまざまです。本記事では、大手エアコンメーカーの内部クリーン機能を現役のエアコン設計者が徹底比較します。
この記事を読んで分かること
本記事では、大手エアコンメーカーのエアコン内部クリーン機能を、メーカーおよびグレードごとに比較、分析しています。
エアコン購入時に、機能を比較する際の参考になります。
結論
お部屋の快適性、家族の健康のためには、クリーン機能を搭載しているエアコンはありがたいですね。
本記事の結論は下記のとおりです。
ダイキン
低価格帯の機種でも、フィルター自動お掃除やストリーマー機能を搭載しており、エアコン内部の自動お掃除機能でみるととても充実したラインナップといえます。
パナソニック
低価格帯の機種は、最低限の機能とするコンセプトだと思われますが、パナソニックの強みであるナノイーを普及上位にも搭載していて魅力的です。
三菱
上位機種においてエアコン内部お掃除機能がとても充実しています。また、自動ではありませんが、どのシリーズも部品が取り外しやすい構造になっており、痒い所に手が届くという点でとても優れています。
日立
日立はとにかく高級機種のエアコン内部お掃除機能がダントツです。自動お掃除に対するこだわりが伺えます。ただ、下位機種は最低限の機能にとどめているようです。
シャープ
シャープといえばプラズマクラスターですが、中級グレードまでの搭載となっています。ただし、プラズマクラスターの効果は大きく、そのために中級グレードを購入しても良い程の機能といえます。
富士ゼネ
富士ゼネは、上位機種のエアコン内部お掃除機能は他社と比較して多くはないものの、下位機種まで安定して搭載されています。
各メーカーの製品ラインナップ一覧
各メーカーのエアコンがどのような製品ラインナップを持っているのかを把握することはなかなか困難ですよね。
そこで、まずは、大手エアコンメーカーの製品ラインナップについて下の表のようにまとめました。
各メーカーによってグレードの名称が違うため、今回は、グレードが高い方から順に、最上位機種、上位機種、標準機種上位、標準機種下位、普及機種上位、普及機種下位のように並べました。列で見るとおおむね同じグレードの機種が分かるようになっています。
例えば、前回までの、エアコンメーカー別のエアコン内部自動クリーン機能の紹介は、一番左の列の最上位機種について行っています。
参考記事:エアコンの自動お掃除機能って本当にキレイになるの?現役のエアコン設計者が徹底解説!!~日立編~、~ダイキン編~、~パナソニック編~、~三菱編~、~シャープ編~、~富士通ゼネラル編~
各メーカーラインナップごとのエアコン内部自動クリーン機能一覧
各メーカーの製品ラインナップが見えたところで、製品ごとにどのような内部自動クリーン機能を搭載しているのかをまとめました。
図中の文字は、各メーカーで搭載している自動お掃除機能の頭文字からとっています。動作詳細は多少違うかもしれませんが、おおむね同じ機能といえるものは同じ機能名でまとめています。今回まとめた機能は次の通りです。また、各機能の右側に示した数字は、後でメーカー毎の比較を行うために設定した点数です。
点数は、私のエンジニア視点で独断と偏見で設定していますので、差を見やすくするための参考値です。各機能の点数と根拠は以下の通りです。
文字が表す機能と点数
- フィ :コーティング等によるフィルタークリーン 1
- フィ自:フィルター自動お掃除 4
- 放 :イオン等の放出系による内部クリーン 5
- 水 :凝縮水(結露水)による熱交換器クリーン 3
- 加湿 :加湿水による熱交換器クリーン 5
- 氷 :凝縮水(結露水)凍結による熱交換器クリーン 5
- 乾 :加熱乾燥 3
- 送 :送風乾燥 1
- 風 :コーティング等による通風路クリーン 2
- ファ :コーティング等によるファンクリーン 2
- ファ自:ファン自動お掃除 5
- ド :ドレンパン(排水トレイ)クリーン 4
- 熱 :熱交換器コーティング 1
- 外 :室外機クリーン 5
- 取 :パーツが簡単に取外せる構造 3
点数の根拠
フィは、フィルター自体へのコーティングや練り込み材による防汚対策です。コストはかかりますが、各メーカー共に同じような機能を持っているため1点としました。
フィ自は、フィルターの自動お掃除機能で、各社掃除の方式は違えどここでは、同じ機能とみなしています。ただし、エアコン内部で動く機能は、構造的に信頼性を確保することがとても難しいため、4点としました。
放は、イオンなどの放出系を用いたエアコンの自動クリーン機能です。パナソニックのナノイーや、シャープのプラズマクラスターがこれに該当します。放出系は、そのモジュール単体の価格が安いものではなく、メーカーとしては、下位機種への展開がコスト的に難しいと思われます。そのため、低価格帯の機種で差をつけるために5点としました。
水、加湿、氷はともに熱交換器からの凝縮水によって、熱交換器に付着したホコリやごみを流す機能です。氷は、凝縮水を凍結させてから流す機能で日立オリジナル、加湿は、加湿水を使用するもので、ダイキンのオリジナル機能となります。水は、冷房運転すれば発生でき、下位機種にも展開しやすいので3点、加湿は、ダイキンオリジナルなので5点、氷は日立オリジナルなので5点としています。
乾は、加熱乾燥で、熱によりエアコン内部のカビや菌を抑制する機能です。これは暖房運転をすれば可能です。ただし、エアコン内に熱がこもってしまうため、ユーザーの快適性を損なわないように上手く制御する必要があり、技術レベルとしては高いため3点としています。
風は、コーティング等による通風路クリーンで、ファは、コーティング等によるファンクリーンとし、こちらは、メーカーによってやっていないところもあるため、それぞれ2点としています。
ファ自は、エアコン室内機の送風ファンの自動お掃除機能です。これは日立オリジナルであり、ファンに何かを当てる(この場合はブラシですが)というのは、とても技術的なハードルが高いと考えられるため5点としています。
ドは、エアコン室内機のドレンパン自動クリーン機能です。ドレンパンは、熱交換器からの凝縮水を流す役割を持っています。うまく排水できないとカビの発生原因となるため、掃除をしたい部品ですが、エアコンの構造的に掃除しにくい場所にあります。よって、自動でドレンパンを清潔に保つ機能は非常に魅力的であるため4点としています。
熱は、熱交換器コーティングです。熱交換器のフィンにコーティングを施し、防汚効果(撥水、親水などメーカーによって様々)を向上しています。ただ、どのメーカーにも搭載されているため1点としています。
外は、室外機クリーン、これは室外機の熱交換器を清潔に保つ日立オリジナル機能を指しており、5点としています。
取は、室内機の部品を取外し易くすることで、通常掃除しにくい部分でも掃除しやすくなるという構造の工夫による機能です。自動お掃除機能ではありませんが、設計時にパーツを簡単に外せることを優先にして設計することは、エアコン室内の機構造体を考えるうえで、技術レベルが高いと考えられるため、3点としています。
エアコン内部自動クリーン機能が下位機種まで充実しているメーカーは?
上記の機能を点数化し、各セルの右下合計値を並べてみました。
表中では、各シリーズの代表機種と価格も示しています。価格は、価格.comにて、それぞれの機種が発売し始めたときの価格を記載しており、グレードの参考値としてください。
どのメーカーも下位機種になればなるほど点数が落ちていきますが、一番落ちが小さかったのは、ダイキンで、21点から13点(8点差)、一番落ちが大きかったのは、はじめの点数が高いということもありますが、日立で、35点から2点(33点差)でした。メーカーごとの得点の推移をグラフにして見やすくしてみました。
ポイントとなる機能は、フィルタ自動お掃除(フィ自)と放出系(放)がどこまで展開されているかというところです。理由は、フィルタお掃除は、室内機内部の場所を取るため下位機種に展開しにくいため。そして放出系は、先述しましたが、モジュール単価が高いので下位機種に展開しにくいためです。
これらを考慮すると、ダイキンのエアコン内部自動クリーンが下位機種まで充実していると見ることができます。普及上位機種まで、フィルタ自動お掃除機能、放出系が搭載されています。普及下位機種まで放出系が搭載されているのはダイキンのみでした。
これに対し、日立は、最上位機種から標準上位までの得点が非常に高く、上位帯でクリーン訴求に注力していることが伺えます。
結論
結論としては、唯一、普及下位機種まで放出系を搭載しているダイキンが、最もエアコン内部自動クリーンが下位機種まで充実しているといえます。
パナソニックは、普及下位は最低限の機能とするコンセプトだと思われますが、強みであるナノイーを普及上位にも搭載していて魅力的です。
日立は、高級側では自動内部クリーン機能が優れているものの、下位機種までの展開は少ないといえます。
三菱は、上位機種においてエアコン内部クリーン機能がとても充実しています。また、自動ではありませんが、どのシリーズも部品が取り外しやすい構造になっており、痒い所に手が届くという点でとても優れています。
シャープの代名詞ともいえるプラズマクラスターは単体コストが高いのでしょうか、標準グレードまでの搭載となっていました。ただ、プラズマクラスターのために標準グレードを購入しても良いと思わせるほど魅力的な機能であることは間違いありません。
富士ゼネは、上位機種のエアコン内部クリーン機能が他社と比較して多くはないものの、下位機種まで安定して搭載されています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事では、大手エアコンメーカーのエアコンの内部クリーン機能の比較を行いました。
近年、エアコンの自動内部クリーン機能が各メーカーとも充実しており、ユーザーとしてもメンテが少なくてすむのはとてもありがたいですよね。
エアコン買い替えや新規ご購入を検討の際は是非参考にしてみてください。
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